子の親権問題について(未成年の子の旅券申請を含む)

 

1.      近年、国際結婚が増えていますが、結婚生活で困難に直面した国籍が異なる父母の一方が子を

現地の法律に反して母国に連れ去り、問題になる事案が発生しています。

この問題について、留意していただきたい点をまとめました。

 

Q.何が問題なのですか?

 

A.

 

父母のいずれもが親権(監護権)を有する場合に、一方の親が他方の親の同意を得ずに子を連れ去る行為は、米国やカナダの国内法では、重大な犯罪(実子誘拐罪)と

されています(注)。 例えば、カナダに住んでいる日本人親が、他方の親の同意を得ないで子を日本に一方的に連れて帰ると、たとえ実の親であってもカナダの刑法に

違反することとなり、これらの国に再渡航した際に犯罪被疑者として逮捕される場合があります(実際に、逮捕されるケースが発生しています)。
 国際結婚した場合、その間に生まれた子を日本に連れて帰る際には、こうした事情にも注意する必要があります。

 

(注)
●カナダ:14歳未満の子の連れ去りの場合、10年以下の禁錮刑等を規定(刑法第282、第283条)。
●米国:16歳未満の子の連れ去りの場合、罰金若しくは3年以下の禁錮刑又はその併科を規定(連邦法Title 18, Chapter 55, Section 1204)。

 

州法により別途規定がある場合もあります。各州による規定の詳細については、以下のNational District Attorneys Associationのウェブサイトを御参照下さい。

http://www.ndaa.org/pdf/Parental%20Kidnapping%20June%202010.pdf

 

 

 

Q.ハーグ条約(国際的な子の奪取の民事面に関する条約)とは、どのような条約ですか?

 

A.

 

国境を越えた不法な子の連れ去りを防ぐことなどを目的として、1980年、国際的な子の奪取の民事面に関する条約が採択されました(平成20年9月現在、締約国は81ヶ国)。日本は、締結の可能性について検討を始めたところです。 この条約の締約国は、不法に子を連れ去られた監護権者からの申立てを受けて、条約上の例外事由がない限り、子が元々居住していた国に迅速に返還されるように努めるなどの義務を負います。子の返還後は、親権を巡る父母間の争い等は、子が元々居住していた国の裁判所において決着することになります。以上のように、この条約は、不法に連れ去られた子の返還について定めるものですから、子の居住していた国の法律、手続に従って日本に連れてきた子が、その国に送還されることはありません。

 

 

 

2.      未成年の子にかかる日本国旅券の発給申請について

 

未成年の子に係る日本国旅券の発給申請については、親権者である両親のいずれか一方の申請書裏面の

「法定代理人署名」欄への署名により手続を行っています。 ただし、旅券申請に際し、もう一方の親権者から

子の旅券申請に同意しない旨の意思表示があらかじめ在外公館に対してなされているときは、旅券の発給は、

通常、当該申請が両親の合意によるものとなったことが確認されてからとなります。

 

その確認のため、在外公館では、通常、子の旅券申請についてあらかじめ不同意の意思表示を行っていた側の

親権者に対し、同人が作成(自署)した「旅券申請同意書」(書式自由)の提出をお願いしています。

また、米国においては、父母の双方が親権を有する場合に、一方の親権者が、子を他方の親権者の同意を

得ずに国外に連れ出すことは刑罰の対象となる可能性があります

(各州における規定の詳細については、上記のウェブサイトを御参照ください。)。

 

実際に、居住していた国への再入国に際し、子を誘拐した犯罪被疑者として逮捕されたり、

ICPO(国際刑事警察機構)を通じて国際手配される事案も生じており、当館では、在留邦人の皆様が

このような不利益を被ることを予防する観点から、子の旅券申請の際には、他方の親権者の不同意の意思表示

がない場合であっても、旅券申請に関する両親権者の同意の有無を口頭にて確認させて頂いておりますので、

あらかじめ御承知ください。

 

(了)

(子の親権問題に関する関連リンク)

子供の親権問題に関する各州の家族法制度、Q&A等の情報をアップしました。

 

 

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